爛れた左顔に触れると、トシは唇を噛み締めた。感触はぼこぼことしていて、固い靤が幾重にも重なっているようだった。そのまま撫でていると、
「無理はしなくて結構です」
 断然とトシが云う。勝気な瞳が銀時を貫いた。銀時はその黒瞳が気にいった。
 櫨の木の和蝋燭が、狭い一間に灯っていた。炎が風に揺られるたびに、トシの表情の上で陰影が変化する。先ほど小袖を鎖骨まで肌蹴させたので、トシは襟元を胸の谷間の辺りで両手で掴み、押さえていた。揺れる瞳は艶やかにその奥で銀時を映している。尖った肩先は細く、項は柔らかい線を描いていた。
 銀時はトシの掌を包み込むように両手で挟んだ。そのまま自分の方に引き寄せると、襟が手から離れ、音を立てて落ちた。上半身が露わになった。垂れた麻の小袖は帯を隠し、トシは微茫に狼狽した。
「灯りを………」
「もう少し」
 トシは赤面して俯いた。包んだ両手をトシの身体の両脇に下ろし、小さな頭に腕を回して、後ろ髪に手を触れた。右の首筋に唇を近付けると、僅かにトシの肩が動く。触れるか触れないかの距離まで寄せると、産毛が銀時の唇を擽った。吸いつくのが勿体ないぐらい、綺麗な肌だった。軽く唇を触れさせて、そのまま線に沿って、耳元に寄せる。肌の匂いは純粋で温かかった。
 銀時はくつくつと喉で微笑って「無理はしなくていいからな」と耳元で囁く。びくんとトシの躯が跳ねた。
「し、してません!」
「じゃあ、俺も一緒だ」
 憤慨した声にそう答えると、耳朶を甘噛みし、そっと離れ、唇に吸いついた。後頭部を支えている手と唇でトシを先導してやると、最初は戸惑っていたが、暫くすると慣れてきたのか、自ら銀時に合わせた。舌を口内に差し入れても、真似をするように応じてきた。途切れ途切れに漏らす声が切なげで、銀時の胸は熱くなる。堪りかねて、空いている方の手で、腰の括れを軽く擽り、人差し指を肌に伝わせて乳房の膨らみのすぐ際まで持ってくる。焦らすように周囲を旋回させてから、先端の突起を避けて揉み、その弾力を愉しんだ。
 トシの躯が後ろに傾いたので、頭に添えていた手を背中に移動させる。お互いの漏らす声を喰らうように接吻を重ねていると、頭が霞がかったように痺れ、股間が膨張していた。いつの間にか、トシに、縋りつくように抱きしめられていた。
 唇を離し、そのまま布団に寝かせ、帯を解く。前を寛がせながら、片方の胸に吸いつき、舌で舐めるように愛撫した。もう片側は指で可愛がる。摘んだり、弾いたり、捏ねたりさせる。自分の思うままに動く膨らみに、子供のように夢中になった。トシは快感をうまく拾えていないようだった。気娘らしく、俎板の上の鯛になっていた。手入らずかと思うと銀時は喜悦が沸いた。これから自分の手で染めていかれる。トシの性を開花させるのが自分だと思うと、背中に電流のような快感が走った。
 胸を愛撫していない手を腰から下肢に移していく。淡い茂みを撫で、肢の付け根の線を通り、陰部に到達する。未だ誰の手の感触も知らないであろうそこは、しめやかに濡れていた。トシの身体が緊張し強張った。
 胸の愛撫を止め、身体を起こして「恐ろしいか」と訊くと、「いいえちっとも」と震えた返答がくる。銀時は益々トシが可愛くなった。
「今日は少しだけな」
 肉ビラは閉じていた。右手の人差指と中指で開かせると、膣口が現れる。トシが内腿をくねらせた。
 膣口と前の小さな突起をゆっくりくじる。トシが息を呑んだ。腰が微茫に揺れ、膝が曲がる。溢れ出る液体が粘着質な音をさせる。トシが両手で顔を覆った。
 少し緩んできたところで、右手の第一関節を差し込む。トシが躯を捩じる。第一関節より先は固く閉ざされ拒んでいた。
「痛いか」
「まだ、平気」
 上擦っている。銀時の怒張は着流しを突き上げていた。
 第一関節より先は進めずに、そのまま指を出し入れする。反対側の手で、裾を割り、自分の性器を掴んで擦った。
 まだほんの入り口だが、トシのそこは温かい。指を出す時は名残惜しそうにし、挿れると拒絶する。痛みがないように、数回繰り返すと、つぶっと指が第二関節まで這入った。指は迎え入れたが、膣内は未だ固い。そのままの状態で、トシを呼んだ。
 トシは、顔を覆っていた手を恐る恐る離し、銀時を見上げる。涙の膜が張った瞳が、銀時の陰茎を眼にし、驚愕が浮かんだ。
 銀時は苦笑した。
「大丈夫だ。今日は挿れねぇよ」
 安堵するかと思ったトシは、予想を裏切り、眦を釣り上げた。
「気遣いは御無用です」
 躯は小さく震えている。
「じゃあ、ちょっと起きてみろ」
 トシは手をつき、躯を右に傾け起き上った。その動きにより、銀時の指が膣内で揺れ、くぐもった声を漏らした。そして、その光景をまざまざと眼にし、耳まで赧くなった。
 トシの最奥から淫液が漏れてくる。銀時は指を動かしながら、トシ視てる目の前で、トシの乳房を撫で、乳首を指の間で転がした。トシは固く眼を瞑る。
「眼ぇ開けて、見てみろよ。気持ちよかったら感じていいぜ。その方が、お互い愉しくなる」
「何………?」
「折角、夫婦になったんだ。房事だってなんだってそう硬くならないでやってこうぜ。これからずっと一緒にいるんだ。無理したってそのうち絶対に襤褸が出る。俺は、お前の事を半年間、近藤に聴いてきたんだ。お転婆で口が悪くて男勝り、そんでかなりの強情だって事はちゃんと識ってんだ。その顔も引け目に思わなくていいよ。俺はお情けでお前を貰ったわけじゃない。お前の事が気に入ったんだ」
「私は……………」
「いいよ。大丈夫だ、分かってる。近藤の恩に報いたんだろ。大丈夫だから。これからゆっくり俺の事を好きになってくれればいい。房事も痛かったら気持ち悦くなれないだろ。俺はお前に気持ち悦くなって欲しいし、そんで、俺も気持ち悦くなりたい」 
 トシは瞬きすると、気恥ずかしそうに眼を細めて微笑った。瞬間、固く締まっていた膣内が綻びる。銀時が指を動かすと、少し戸惑った気配はみせたものの、小さく喘いだ。
 左顔に手を触れ、顔の彼方此方に唇を寄せる。トシは擽ったそうにしながらも、眼を開けて受け入れていた。